Ubuntu のありがちな誤解 1

むしろこのエントリ自体に誤解があるかもしれない。

Ubuntu って初心者用の Linux なんでしょ?

いいえ。違います。
Ubuntu はエンドユーザにとって使いやすい環境を目指していますので、従来の Linux デスクトップよりも扱いやすいのは事実だと思います。そのため「初心者でも扱える」イコール「初心者用」と捉えられてしまいがちですが、Ubuntu は決して補助輪つきの自転車ではありません。
Ubuntu は誰でも使える Linux です。もちろんこの「誰でも」の中には初心者も含まれています。

日本語を使うには日本語版が必要なんだよね?

いいえ。本家版でも日本語は使えます。
まず、日本語版というものはありません。Japanese Team が作成してリリースしているのは「日本語 Remix」(旧名 日本語ローカライズ版)です。これは綺麗な日本語フォントや日本人向けのアプリケーション*1が簡単に利用できるよう、日本人向けの微調整を行ったバージョンです。
Ubuntuをはじめ最近のディストリビューションは国際化がなされており、複数の言語を切り替えて使用することができます*2。日本語の表示、入力は本家版でも問題なく利用可能ですので、Japanese Team のリポジトリや、Remix 版で提供されるアプリケーションに興味がないのならば本家版を使っていても特に問題はありません。また、Japanese Team のリポジトリを手動で追加し、日本語 Remix と同等の環境を本家版から作ることも難しくありません。

サーバを立てるにはサーバ版が必要なんだよね?

いいえ。デスクトップ版をベースにサーバを構築することも可能です。
サーバ版とデスクトップ版は、デフォルトでインストールされるパッケージの構成が違うだけであり、パッケージそのものは同じリポジトリから取得しています。例えば Web サーバを立てようとした場合、サーバ版でもデスクトップ版でもインストールされる Apache は同じものです。デスクトップ版にサーバ用のプログラムをインストールすれば、サーバ機能を提供することが可能ですし、サーバ版に ubuntu-desktop パッケージを導入すればデスクトップ版と同じデスクトップ環境を使用することができます。
デスクトップ版とサーバ版は、それぞれの用途に適した「おすすめ構成」になっているだけで、基本的には同じものだと思ってくれて結構です。

USB ハードディスクにインストールすれば、既存の環境を汚さないから安心だよね?

いいえ。ブートローダのインストール場所を考えないと大はまりする可能性があります。
Ubuntuインストーラはデフォルトで先頭のハードディスクの MBRGrub をインストールしようとします。この状態で /boot *3が USB ハードディスクにインストールされてしまうと、USB ハードディスクを取り外した状態では Grub が error21 で起動しなくなります。

UbuntuLinux だから、古いパソコンでも快適に動くよね?

いいえ。compiz のようなリッチなデスクトップを動かそうと思ったら、それなりのスペックが必要です。
少なくとも最新のデスクトップ環境を Windows98 時代のリサイクル PC で動かすのは無理があります。もちろん不要な機能を削り落として軽量化することは可能ですが。

Ubuntu は常に最新のソフトウェアが使えるんでしょ?

いいえ。
Ubuntu に限らずほとんどのディストリビューションは、リリース後にソフトウェアのバージョンを上げることをしません。ですので Ubuntu のリリース後に出たバージョンが搭載されるのは、次の Ubuntu のリリースまで待たなくてはなりません。

UbuntuDebian って仲悪いんでしょ?

いいえ。
少なくとも Ubuntu Japanese Team と Debian-jp のメンバは一緒に餃子を食べにいくくらいの関係です。

Ubuntu があれば Debian いらないよね?

とんでもない!
Debian の成果を母体として Ubuntu は開発されていますので、Debian がなくなったら Ubuntu も成立しません。

*1:2ch ブラウザや SJIS 対応アーカイバなど

*2:Debian lenny は 77 ヶ国語に対応しているそうですよ

*3:Grub の stage2